シールド・推進技術 泥水式シールド工事で発生する重金属汚染土の浄化システム

概要

現在、都市部では鉄道や道路整備を目的としたシールド工事での大深度・大断面施工が増加しています。地質的にみると大深度となる地下40m以深では固結シルト層から環境基準値を超えるヒ素をはじめとする自然由来の重金属の溶出が確認されています。大断面でのシールド工事では大量の掘削土砂が発生するため、この土砂が汚染土である場合、処理に大きなコストが必要となります。
そこで、当社では泥水式シールド工事から発生する汚染土に、比表面積を増加させるための特殊な表面処理によりヒ素や鉛などの重金属の吸着性能を有した特殊鉄粉を添加し、さらにその特殊鉄粉を磁気選別機あるいは遠心分離機で除去することにより、基地内で汚染土を浄化処理し環境基準値以内とすることが可能となる重金属汚染土浄化システムを開発しました。

泥水濃縮システム+重金属汚染土浄化システムの泥水フロー(土砂改質する場合)
特殊鉄粉

メリット

  • 泥水式シールド工事で発生した重金属汚染土は、最終処分場や浄化施設での処理が行われており処分先が限定されていましたが、本システムにより基地内で重金属汚染土を浄化することで、一般的な二次処理土として取り扱うことができます。
  • 本システムを使用することで、従来のφ14.5mの泥水式シールド工法で5,000mを施工した場合と比較して工事費全体で15%程度のコストダウンが可能となります。

特徴

  • 「泥水濃縮システム」(省面積立坑システムの要素技術の一つ)を使用し、余剰泥水を比重1.2から1.4程度に濃縮することで、浄化対象の泥水量を約半分にすることができます。
  • 浄化対象の泥水量が半分になるため、浄化システムの能力を半分とすることができます。
  • 比重1.2も比重1.4も泥水中に含まれる土砂の量は同じであるため、使用する特殊鉄粉の量は変わりません。
  • 本システムの使用により、発生する二次処理土が浄化処理され環境基準値以内となるため、従来の全量最終処分とする方法と比較して工事費全体で15%程度、処理設備損料および土砂処分費のみの比較で30%程度のコストダウンが可能となります。
比重1.2と1.4の泥水の体積比較
論文