INTERVIEW 02
技術研究所
環境創造部
K.O

01
「壁面緑化の効果」と
「室内の光環境」を研究
環境にやさしく、人も快適に過ごせる建物をつくりたい——。そんな想いで私が研究しているテーマが、「建物の緑化」と「光環境」です。
「建物の緑化」の研究で取り組んでいるのが、壁面緑化に使われるツル植物のCO₂吸収率を評価する技術の開発です。樹木のCO₂吸収率を計算する方法は確立されていますが、壁面緑化のような壁面緑化に使われる植物(ツル植物)ではCO₂吸収量に関する知見がまだ少なく、環境条件や立地を考慮した評価方法を確立することが求められています。
現在は筑波技術研究所グリーンオフィス棟の壁面緑化を対象に、CO₂吸収量の推定に必要な葉面積や光に関するデータを収集しています。日々成長するツル植物のCO₂の吸収量を推定することは難しいですが、壁面緑化の効果を可視化することで、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを後押ししていきたいと考えています。
もう1つの主要なテーマが「光環境」です。この研究では、省エネ効果と室内の快適性を両立する空間づくりを目指しています。たとえば、省エネに寄与する窓からの自然光や快適性に寄与する緑化などを含めた眺望を最大限に活用しつつ、照明の明るさやブラインドを自動制御する技術などを研究しています。
すでに、人の生体リズム(サーカディアン・リズム)に着目した照明システムを実用化しています。1日の時間帯に合わせて照明の明るさや色を変化させることで省エネをしつつ、室内にいる人の睡眠の質の向上や生産性の向上が期待でき、病院やオフィスなどに導入されています。

02
農学部から建設業へ。
分野を越境したからこその強み
私が大学で学んだ農芸化学は、生物や化学の知識で生命現象や環境問題を解き明かす分野です。
建設業界を選んだきっかけは、学生時代の入院経験から医療への関心が高まったことでした。病院建設を多く手がける戸田建設が化学系の学生を募集していることを知り、「ハード面から医療を支える」という道に面白さを感じたのです。
農学部から建築業界へと進んだことで、入社当初は学ばなければならない専門知識が多く、戸惑ったこともありました。しかし、わからないことを教わったり、調べたりする過程も、私にとっては充実した時間でした。
一方、分野を越境したからこそ、既存の枠にとらわれず多角的な視点で物事を捉えられることが私の強みになっていると感じます。現在行っている研究でも、「光が人や植物といった生物にどう作用するか」というメカニズムを理解するうえで、このバックグラウンドが役立っています。
入社後にサーカディアン・リズムに着目した照明システムの開発に携われたことで、入社時に抱いていた「医療に携わり、人の健康に貢献する」という想いを実現できました。この経験は、ハード面から医療を支えることの意義を深く感じられる貴重なものとなりました。
研究を進めるうえで大切にしているのは、その技術が「誰のためになるのか」を考えることです。お客様や建物を使う人はもちろん、設計者の方々、一緒に働く社内のメンバーなど、それぞれの立場やニーズを深く理解することが大切だと考えています。
また、自分の専門分野だけでなく、関連する幅広い知識を学び続けることも欠かせません。研究は地道な作業の積み重ねが多いのですが、試行錯誤の末に新しい発見を得られたときや、開発した技術が誰かの役に立っていると実感できたときに大きなやりがいを感じます。
03
常に学び続け、
現場の役に立つ研究をしていきたい
戸田建設のブランドスローガンに「人がつくる。人でつくる。」とありますが、当社はまさにそれを実感できる会社だと思います。立場に関係なく親身に話を聞いてくれる人が多く、人の温かさが戸田建設の魅力の1つです。また、若手であっても意欲があれば大きなプロジェクトを任せてもらえる一方で、自分が興味を持っている研究テーマを探究することもできます。
技術研究所は一人ひとりの専門性を活かしながらも、多様な研究開発に携わる機会があります。社外の研究機関との連携も活発で、そこから新しい発想が生まれることも少なくありません。
こうした環境の中で今後も研究者として真摯に学び続け、人の健康を維持するための室内環境づくりに貢献していきたいと考えています。そして、環境への配慮と科学的な知見に基づいた技術で、人々が心身ともに健やかに過ごせる持続可能な社会の実現に貢献していきたいです。
