新着情報 シールドトンネルの品質向上に寄与 セグメントリング間の新たなワンパス型継手で締結力向上を実現

2021/02/26

戸田建設(株)(社長:今井 雅則)は、日本ヒューム(株)(社長:大川 内稔)とともに開発した「ハイグリップアンカー(以下、HGA)継手※1」を、当社施工のシールド工事に初適用しました(写真1)。
HGA継手は、従来のボルト・ナットによる締結に代わり、セグメントリング間の締結に用いるワンパス型継手※2です(図1)。作業効率の向上に加え、この継手の特長である高い締結力によってシールドトンネルの品質向上が期待できます。今回の現場適用では、内空2,800mmのトンネルに対して施工性やその特長を確認できました。

※1 HGA継手を用いたセグメント
https://www.toda.co.jp/tech/shield_construction/segment.html

※2 セグメントをトンネル軸方向にスライドさせるだけで締結を可能とする継手

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写真1 適用現場における坑内作業状況
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図1 セグメント組立イメージ

開発の背景

シールドトンネル用セグメントの組み立てにはボルト・ナットによる継手が多く用いられてきましたが、ボルトを入れる箱抜き部を塞ぐ作業など、後施工に多大な時間を要する等の課題がありました。そのため、ボルト締結の代わりにトンネル軸方向にスライドさせるだけで組み立て可能な各種のワンパス型継手が開発され、セグメント組立時間の短縮や後施工の省略など施工の効率化が図られています。二次覆工の省略や高速施工化・自動化の観点から、さらには社会的課題である担い手不足の解消といった観点からも、今後もこのような継手を用いたセグメントの採用が増加すると見込まれます。
一方で、ワンパス型継手の使用においては、施工時荷重や地震時の外部荷重等により継手の締結が緩み、セグメントリング間に隙間が生じた場合、トンネル内に漏水が発生する等のリスクがあるため、セグメントリング間の引抜抵抗力の強化を目的とした新たなワンパス型継手の開発を進めてきました。

本技術の概要

本技術は、シールドジャッキを用いてトンネル軸方向にセグメントを押し付けることにより、セグメントリング間の締結を可能とするものです。高い締結力を発揮し、セグメントリング間の一体性向上が図れます。
HGA継手の構造は図2のように、受け入れ部と軸部材(短冊部・ねじ切り部)、軸部材を拡張するためのコーン部、それとセグメントに固定するための定着筋(異形鉄筋)で構成されています。

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図2 HGA継手構造概要

セグメント組立前に、M側定着筋に軸部材のねじ切り部をねじ込みます。
次にトンネル軸方向にセグメントを押し付ける際に、軸部材の先端(短冊部)に円錐形のコーン部を取り付けます。短冊部はスリット加工がされており、このコーン部が押し付けられることで締結時に軸部材の先端が拡張され、高い締結力を実現します(写真2,図3参照)。

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写真2 継手締結状況(リング間)
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図3 HGA継手締結の仕組み

本技術の特徴

  1. 1セグメントリング間の引き抜き力に対する抵抗力が高く(既存の継手の1.5~2.0倍)、施工時や地震時等の大きな作用に対して、トンネルのリング間に隙間が生じにくい
  2. 2締結後すぐに抵抗力が発現するため、組立後に生じやすい僅かな緩みも防ぐことができる
  3. 3ボルトの締め付け作業が不要となるため、施工の自動化に有用
  4. 4組立時間の短縮や後施工の省略により、工程短縮・コスト低減が図れる

今後の展開

当社は今後、セグメントピース間に用いる継手の開発を進めるとともに、トンネルの品質向上、工期短縮やコスト低減が図れる技術としてお客様に積極的に提案し、本技術の現場適用を推進していきます。