新着情報 切羽前方地山の弾性波速度、比抵抗をセンサ挿入により一度に測定
孔内センサ挿入前方調査技術「DRiログ」を開発、道路トンネルに適用

2021/03/05

戸田建設(株)(社長:今井 雅則)は、山岳トンネルの安全で合理的な掘削に重要な切羽前方地山の物理的特性を容易に測定できる調査技術「DRiログ」を開発しました。この技術は、切羽から削孔検層(DRISS)等で設けた水平孔に、測定管(センサ内蔵)を挿入することで、地山の代表的物性値である弾性波速度と比抵抗分布を測定でき、トンネル施工に重要なデータを一度に取得することができます。
弾性波速度は地山分類に使用される最も重要な指標で、割れ目や破砕帯の存在により低下します。比抵抗も地山分類に使用されることがあり、地山の水分含有状態や粘土化の影響を強く受けます。弾性波速度と比抵抗の値を同時に測定することにより、地山評価の精度向上が期待できます。
センサは測定管に保護されているため、測定中の孔壁崩落で測定管が抜けなくなっても、弾性波受振器など主要なセンサは回収可能になっています。この度、国土交通省中部地方整備局発注の設楽ダム設楽根羽線1号トンネル工事に適用し、良好な性能を確認しました。

開発の背景

切羽前方の地質を把握することは、山岳トンネルの切羽崩壊などを回避し、安全に掘削する上で重要です。当社は既に切羽前方の地質を直接観察できる内視鏡による切羽前方調査技術(DRiスコープ※1)を開発しましたが、地山の物理的性質が把握できないという課題がありました。孔内センサ挿入前方調査技術「DRiログ」は、油圧ジャンボ等で切羽から削孔した約50mまでの水平孔内に、弾性波と比抵抗が測定できる装置を挿入し、切羽前方の地山物性値を直接測定することにより、切羽前方の地山の評価に活用することができます。地山状況によりDRiスコープと組み合わせて適用することにより、高度な切羽前方の調査システムを構築し、トンネル掘削の安全性向上と合理的な掘削に役立てます。

本技術の概要

  • 切羽から30~50mの水平孔を油圧ジャンボにより削孔します。この水平孔は削孔検層を実施した孔を利用することが可能です。
  • 図1のように測定管を挿入します。測定管は塩ビ製で、弾性波と比抵抗を同時に測定可能となっており、水平孔内に挿入が容易な上、センサを保護するケーシングの役割を果たします。
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図1 DRiログの概念図
  • 測定管の先端部に設けられた比抵抗測定電極(測定センサ)はブラシ状リングになっており、地山との接触が良くなるように作られています。比抵抗測定電極は6個あり、切り替えて3パターンの電極配置で測定することが可能です。また、測定管の内部に弾性波受振器を2m間隔で内蔵しています。弾性波受振器は切断可能な部材で測定管先端に接続されており、孔壁崩壊により測定管が地山に捕捉された場合でも回収可能な構造になっています。
  • センサは測定管に保護されているため、測定中の孔壁崩落で測定管が抜けなくなっても、弾性波受振器など主要なセンサは回収可能になっています。この度、国土交通省中部地方整備局発注の設楽ダム設楽根羽線1号トンネル工事に適用し、良好な性能を確認しました。
  • 測定の方法は、切羽を打撃し測定パイプ内の受振器で弾性波速度を測定(ダウンホール法)した後、測定管を引き抜きながら電極を移動させ、比抵抗を4電極法で測定します。
  • これにより、切羽前方30~50m区間の弾性波速度分布と比抵抗分布を得ることができます。

適用結果

設楽ダム設楽根羽線1号トンネル工事で本技術を実施しました。切羽前方30mまでの比抵抗分布(図2)、弾性波速度(図3)を、一度の測定管挿入作業で測定することが出来ました。比抵抗は、孔荒れしている部分で接触不良により大きな値が出ている箇所以外で、ほぼ100Ωm前後の値が得られ、掘削時の観察結果と照合すると地山の岩質を反映して、変化していることがわかりました。弾性波速度は、切羽近傍を除いてほぼ2.5km/sとの結果が得られました。

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図2 比抵抗分布測定結果
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図3 弾性波速度分布測定結果※2
  • ※2 切羽からの距離(縦軸) に対し、弾性波(P波)が到達した時間をグラフ化することにより、各距離における弾性波速度を求めた。

今後の展開

DRiログは、切羽前方50mまで適用可能であり、切羽前方の地山情報を把握するツールになると考えています。開発済みの工業用内視鏡による切羽前方調査技術(DRiスコープ)と合わせて適用することにより、より高度な切羽前方地山情報が得られます。
当社は、破砕帯等地質条件の悪い地山のトンネル掘削に本技術を適用して、トンネル掘削の安全性を向上させ合理的なトンネル施工に寄与したいと考えています。