新着情報 非開削トンネルの断面変化により地下空間の利活用を拡大 国土技術開発賞など受賞の「さくさくJAWS工法®」が更に進化

2024/03/29

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、非開削トンネル構築技術「さくさくJAWS工法®※1」について、トンネル断面の変化(拡大や縮小)に対応する可変断面型の新たな工法の開発に着手しました。
相鉄・東急直通線 綱島トンネル他工事(神奈川県横浜市)に適用した「さくさくJAWS工法®」は、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構とともに、「第25回国土技術開発賞」優秀賞と「令和4年度土木学会賞」技術賞(Ⅰグループ)を受賞し、地下空間の構築技術として高い評価を得ました。

この「さくさくJAWS工法®」を更に進化させた可変断面対応型工法の開発により、地下空間の利活用の可能性が格段に広がります。

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図-1 本工法の概要

開発の背景

近年、インフラの収容空間や交通ネットワーク、緊急避難場所として国内外で地下空間の利用が注目されています。地下空間は地下街、核シェルターなど用途に応じてその断面形状は様々であり、トンネル構造物においても断面が変化する鉄道や高速道路などの分岐や合流部分など、構築場所や規模によっても構造が複雑化します。地下構造物の断面が変化する場合に用いられる既往の非開削トンネル構築技術としては、シールド工法などで単一断面のトンネル構造物を構築した後に内側から切り拡げる施工法等がありますが、断面を切り拡げる際に周辺地盤が変状し易いため、地盤沈下や陥没の発生等が懸念されます。そのため、一般的に設計段階から拡幅範囲を対象とした地盤改良等が計画されますが、それにより工事全体の期間や工費増加の要因となっています。

そこで当社は、周辺地盤への影響を最小限に抑制できる「さくさくJAWS工法®」の強みを活かし、掘進方向に向けてトンネル断面が変化する構造に対応する、可変断面対応型の非開削トンネル構築工法(以下、本工法)の開発に着手しました。

さくさくJAWS工法®とは

さくさくJAWS工法®は、地下水対応型継手を用いた外殻先行型トンネル構築工法です。

推進工法により小断面の継手付き鋼製エレメントを順次掘削・連結し、鋼製エレメント間の土砂を内側から除去して、継手を拘束ボルトで固定します。継手間および鋼製エレメント内には高流動コンクリートを打設して、トンネルの外殻構造部材を形成します。最後にトンネル内部の地山を掘削除去し、トンネル構造物を構築します(図-2)。

地上に制約がある市街地の直下や、地下水圧が高い地下深くであっても大空間の構築が可能です。

適用工事において、市街地直下において最大0.35 MPaの高い水圧がかかる地下部分に、高さ14m、幅19mの馬蹄形大断面トンネルを構築し、その工法の特長や適用効果、社会的意義などについて高く評価され、「第25回国土技術開発賞」※2の優秀賞と「令和4年度土木学会賞」※3の技術賞(Ⅰグループ)を受賞しました(写真-1)。

  • ※2技術開発者に対する研究開発意欲の高揚並びに建設技術標準の向上を図ることを目的として、建設産業に係わる優れた新技術を表彰するもの。国土交通大臣表彰となる優秀賞に選ばれた技術は、「ものづくり日本大賞」の内閣総理大臣賞の候補として推薦される技術となる。
  • ※3土木学会賞の技術賞は、土木技術の発展に顕著な貢献をなし、社会の発展に貢献したと認められるインフラの計画、設計、施工等の画期的な個別技術やプロジェクトを表彰するもの。
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図-2 さくさくJAWS工法施工手順図
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写真-1 国土技術開発賞表彰式
(左から田中部長、斉藤国土交通大臣、平野理事長代理)

本工法の概要

本工法は「さくさくJAWS工法®」を進化させて、汎用性を拡大した施工技術です。

従来の「さくさくJAWS工法®」では、使用する継手付き鋼製エレメント(以下、エレメント)の幅は全長にわたって同じであり(図-3)、そのため構築するトンネル構造物の断面は始点から終点に至るまで同じ形状、同じ大きさになります。これに対して本工法では、始点側と終点側で幅が異なるエレメント(図-4)を使用し、条件に合わせて連結時の拡幅量または縮小量を調整することで、構築するトンネル構造物の断面の大きさを変化させることができるようになります。

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図-3 さくさくJAWS工法に用いるエレメント
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図-4 本工法に用いるエレメント
<特長>(図-5参照)
  1. 1鉄道や高速道路などの分岐または合流区間に応じて、地下トンネル構造物の断面の拡大や縮小が可能
  2. 2従来工法では地上部への施工の影響が懸念される地下横断区間における曲線部の構築が可能
  3. 3地下トンネル構造物の構築工事で課題となっている埋設物や地中障害物との近接施工にも対応が可能
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図-5 地下トンネル構造物への適用例

今後の予定

当社は本工法を開発することで、従来のさくさくJAWS工法®の強みを活かしつつ、適用範囲を拡大することができるため、大規模なライフライン施設をはじめ、これまで以上に様々な地下大空間の利活用拡大に貢献していきます。