新着情報 シールドトンネルの荷重作用時のひび割れ発生を抑制する新型継手を開発 セグメント間の新型継手「ハイタッチアンカー継手™」

2025/02/03

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、日本ヒューム(株)(本社:東京都港区、社長:増渕 智之)と共同でシールドトンネルのRCセグメントに用いる新たなセグメント間継手「ハイタッチアンカー継手(以下、本継手)」を開発しました。

本継手は、シールドトンネル工事に用いるRCセグメントの接続部のうち、セグメント間に使用する継手です(図-1)。本継手は、挿入側金物と受入側金物で構成され、RCセグメントに埋め込まれる継手定着部(アンカー部)の先端と、挿入側金物の継手嵌合部を同じくさび形状としたシンプルな構造です(図-2)。さらに、鋳造により一体成型とすることでコンパクト化とコスト削減を実現しています。また、本継手を用いたアンカー部の性能試験の結果、従来品と比較してセグメントの表面に発生するひび割れを抑制する効果を確認できました。

本継手の適用により、シールドトンネル工事費の3割以上を占めるセグメント価格の低コスト化とシールドトンネルの更なる品質の向上が図れます。

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図-1 本継手の使用箇所
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図-2 本継手の概要(左:受入側金物、右:挿入側金物)

開発の背景

シールドトンネル工事に用いられるRCセグメントの組立には、高速施工や省力化、内面平滑化による二次覆工の省略等の観点から、ボルト締結が不要でジャッキの押し付け力だけで組立が可能な継手の需要が増加しています。そこで当社は日本ヒューム(株)と共同で、リング間継手であるハイグリップアンカー継手※1に続く、セグメント間継手「ハイタッチアンカー継手」を開発しました。

本継手の概要

本継手は、鋼板にくさび形状の突起を設けた挿入側金物と、そのくさびと嚙み合うようにケースの内側にくさび形状を設けた受入側金物で構成されます。下水道用の厚みが小さいRCセグメントにも設置しやすいコンパクト型で、かつコスト性に優れたシンプルな形状を有する新たなセグメント間継手です。各金物はRCセグメントに埋め込まれており、油圧ジャッキを用いてRCセグメントを軸方向に挿入するだけで組立が完了し、シールドトンネルを構築することができます。

各金物とRCセグメントを一体化させるアンカー部は、全周面で定着する従来の異形棒鋼アンカーとは異なり、アンカー部の先端にあるくさび形状の突起部で定着する構造としています(図-3)。

本継手の特長

本継手の特長は下記のとおりです。

  1. 1嵌合部でくさびが噛み合うことで、受入側金物の開きを防止し、嵌合部の強度を向上(図-4)
  2. 2アンカー部もくさび形状とすることで引張力に抵抗し、従来の異形棒鋼と比べてセグメントのひび割れを抑制
  3. 3鋳造による一体成型でコンパクト化と低コスト化を実現
  4. 4セグメント厚が小さい小口径シールドトンネルにも適用可能
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図-3 アンカー形状による抵抗の違い
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図-4 くさび形状の効果

性能試験結果

本継手を用いた性能試験を実施し、継手として所定の性能を有することを確認しました。

そのうちアンカー引抜試験では、一般的な異形棒鋼アンカーは載荷の初期段階(降伏荷重の50%未満)からひび割れが発生したのに対して、本継手のアンカーは降伏荷重の80%程度になって初めてひび割れが発生しました。降伏後のひび割れ本数や幅等を比較しても、本継手の方がひび割れの程度が小さい結果となりました(図-5)。

他の試験においても、従来継手と比較してコンクリート試験体のひび割れの発生が少なかったことから、初期段階でのひび割れによる漏水を防ぎ、セグメントの品質の向上が期待できると評価しました。

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図-5 アンカー引抜試験結果の比較

今後の予定

当社は今後、本継手と既に開発しているハイグリップアンカー継手と合わせて現場適用を進め、シールドトンネル工事の省力化や品質の向上に貢献していきます。