新着情報 粉体量が多いカーボンネガティブコンクリートのポンプ圧送施工を実現 現場打ち施工を可能にした取組み
2025/05/13
戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)と西松建設(株)(本社:東京都港区、社長:細川 雅一)は、CO2排出量の少ない環境配慮型のコンクリートに関する共同開発を2010年から継続しています。この度、CO2を吸収・固定化した炭酸カルシウムをコンクリート材料として使用し、材料起源のCO2排出量※1が計算上ゼロ以下となる高粉体のカーボンネガティブコンクリートについて、コンクリートポンプ車を使用した実証試験により、現場打ち施工が可能であることを確認しました。

- ※1 材料起源のCO2排出量:コンクリートの製造に使用する材料のCO2排出原単位を用いて算出したCO2排出量であり、CCU(Carbon Capture and Utilization)材料の添加量次第で、CO2の吸収・固定量が多くなり、CO2排出量が計算上でゼロ以下となる。
- ※2 図-1中、普通コンクリートは、強度レベルがカーボンネガティブコンクリートと同等のコンクリート配合であり、カーボンネガティブコンクリート配合①と配合②は使用した炭酸カルシウムの製造方法(基材及びCO2の吸着・固定方法)のみ異なる。
開発の背景
建設業界では、主要材料としてコンクリートが広く使用されており、日本国内におけるコンクリートの年間総出荷量はおよそ7,000万m3(2023年)※3に上ります。一般的にコンクリートの製造には1m3あたり約270kgのCO2が排出されるといわれるため、年間のCO2排出量は約1,900万トンと試算され、膨大な量となります。このため、カーボンニュートラルを実現するためには、コンクリートの製造に伴うCO2排出量の削減が喫緊の課題です。
当社と西松建設は、これまでにコンクリートの材料起源のCO2排出量を最大85%削減できる「スラグリート®」※4を共同で開発し、その技術を発展させる形でカーボンネガティブコンクリートの開発に取り組んできました。今回の実証試験では、過年度実施のプレキャスト製品の製造検証※5に引き続き、ポンプ圧送性を確認しました。
- ※3 全国生コンクリート工業組合連合会・全国生コンクリート協同組合連合会:全国出荷数量の推移、2023年
- ※4 当社リリース「低炭素型のコンクリート「スラグリート®」を開発」
- ※5 当社リリース「カーボンネガティブコンクリートの共同開発に着手」
本技術の概要
本技術のもとになった「スラグリート®」は、コンクリートの配合に含まれるセメント量の最大90%を産業副産物である高炉スラグ微粉末に置き換えた低炭素型のコンクリートです。現在開発中のカーボンネガティブコンクリートは、「スラグリート®」の配合をベースに、さらに、CO2を吸収・固定化した炭酸カルシウムを添加し、その添加量次第で、材料起源のCO2排出量を計算上ゼロ以下に削減できるものです。
一般的に本技術のように粉体量の多いコンクリートは、コンクリートの粘性が高く、硬くなりやすいため、流動性を上げなければ、コンクリートポンプ車での圧送には不向きなケースが多くなります。そこで本技術では、コンクリートの練り混ぜに今回開発した専用の特殊混和剤を使用することで、コンクリートの流動性を保持します。
実証試験
当社と西松建設は、本技術の実証試験として、製造方法の異なる炭酸カルシウムを用いて、2種類のカーボンネガティブコンクリート配合を調整し、コンクリートポンプ車で圧送、打込みを行うことで、以下の点を確認しました。
- 炭酸カルシウムの性状が異なっても、特殊混和剤を使用することで、コンクリートポンプ車で圧送可能なカーボンネガティブコンクリートを製造することが可能である
- 圧縮強度は一般的なコンクリートと同様に発現し、同程度の強度が得られる。
- 炭酸カルシウムの製造方法により色味は異なるが、一般的なコンクリートと比較して白色系である。
- 表層品質は、一般的なコンクリートと同等以上である。




今後の展開
当社と西松建設は、2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて、本技術を土木・建築分野に幅広く適用することを目指し、開発を進めてまいります。