環境 カーボンニュートラル実現に向けた行動計画

当社グループでは、持続的な成長のためのマテリアリティ(重要課題)の1つに「脱炭素社会の実現」を特定し、事業活動におけるカーボンニュートラル実現に向けた活動に取り組んでいます。

コミットメント

当社は、建設現場含む全事業所におけるエネルギーの使用に加え、お引き渡しする建物の使用期間中や調達資材の製造等におけるエネルギー等、事業活動のあらゆる場面でのエネルギーの効率的な利用と再生可能エネルギー利用の拡大によりスコープ1,2,3削減に取り組みます。

当社グループ温室効果ガス排出量の特徴

スコープ1、2について

当社のスコープ1,2の排出源は大きく建設現場とオフィス、工作所等の3つに分けられます。
スコープ1,2の90%以上を占める建設現場では、その70%以上を建設機械(パワーショベル、ダンプ等)で使用する軽油が占めています。一方、建設現場ではタワークレーン、シールドマシン等の機械の他、仮設照明等で大量の電気も使用しています。
建設現場以外では、本支店社屋や技術研究所等で使用する電気、そしてグループ会社が保有するアスファルト合材工場で使用する重油が当社の主な排出源です。

スコープ1,2 計 (2022年度実績):79,971 t-CO2
図. スコープ1,2 計の内訳(2022年度実績,マーケットベース)

スコープ3について

当社では、スコープ1、2に比べてスコープ3の排出量が非常に大きく、特にその大半を占めているのがカテゴリ1とカテゴリ11です。当社において、カテゴリ1は調達する建設資材(コンクリート、鋼材、内外装材等)の製造に関連する排出、カテゴリ11は施工した建物の使用段階における排出が該当します。パリ協定(1.5℃目標)達成には、スコープ1、2の削減に止まらず、低炭素資材の調達や省エネ建物(ZEB※1)の建設を通じたスコープ3の削減にも取り組むことが重要だと考えています。

  • ※1ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル):快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物
スコープ1,2,3 計 (2022年度実績):約620万 t-CO2e
図. スコープ1,2,3 計の内訳(2022年度実績)
スコープ3カテゴリ (t-CO2e)
1 購入した製品・サービス 1,640,878 約27%
2 資本財 122,330 約2%
3 スコープ1,2に含まれない
燃料及びエネルギー活動
11,465 <1%
4 輸送、配送(上流) 15,111 <1%
5 事業から出る廃棄物 6,700 <1%
6 出張 852 <0.1%
7 雇用者の通勤 1,718 <0.1%
8 リース資産(上流) 対象外
9 輸送、配送(下流) 対象外
10 販売した製品の加工 対象外
11 販売した製品の使用 4,357,226 約70%
12 販売した製品の廃棄 31,892 <1%
13 リース資産(下流) 8,177 <0.1%
14 フランチャイズ 対象外
15 投資 対象外
スコープ3計 約620万 100%

グループ行動計画

当社は、2030年度に向けて1.5℃水準のCO2削減目標を設定し、SBTイニシアチブによる認定を取得しています。今後、目標達成に向けた削減活動を進め、2050年度には、SBTイニシアチブのネットゼロ新基準(The Net-Zero Standard)に則り、10%未満の残余排出量をバリューチェーンの外で「中和(森林由来吸収や炭素除去技術等を活用)」し、事業活動におけるカーボンニュートラルの達成を目指します。

行動計画①:建設機械の軽油使用に伴う排出の削減(スコープ1)

建設工事では、建設機械の稼働により大量の軽油を使用しています。この軽油の燃焼によるCO2を削減するため、設計、施工計画段階において施工の効率化や運搬土量の削減等の検討に取り組んでいます。また、ハイブリッド建機等の燃費の良い建設機械の使用や、燃費向上効果が期待できる燃焼促進剤(製品名:K-S1)、CO2排出係数が軽油よりも低い天然ガス由来のGTL燃料(Gas to Liquid)の使用の他、BDF(バイオディーゼル燃料)の利用を推進しています。
上記の軽油代替燃料の利用等と並行して、2020年代は、電気や水素で稼働する革新的建設機械を建設現場で使用するための充電環境等の検討を進めつつ、市場に出る革新的建設機械を積極的に導入し、脱炭素施工の実現に向けた課題の抽出やその解決に向けた施策を実行する計画です。併せて建機メーカー等の関連するステークホルダーとの対話の推進にも取り組みます。2030年代以降は、革新的建設機械の最大限の導入を目指した活動に移行します。

燃焼促進剤(K-S1)の利用

建設作業によるCO2発生要因は作業所で使用する重機や運搬車両の軽油(55%)と大型機械の電力(39%)であり、全体の90%以上を占めています。CO2の排出量を削減するためには、燃焼効率が良く、燃費が優れた軽油を選定する必要があります。そこで、軽油に添加してCO2の排出量の削減効果を得られる軽油用燃焼促進剤(K-S1)を活用しています。重機や建設系車両の軽油に添加(0.1%添加:1ℓに対して1CC)することにより、燃費が10%程度改善されます。CO2排出量削減のほかに、大気汚染の原因となる排気ガス内のPM・NOx等の削減にもつながり、トンネルなどの厳しい作業環境の改善や作業員の健康への負荷軽減にも寄与することが期待できます。協力業者にも利用を推奨し、全国的に活用しています。2022年度は軽油使用量約2,000万Lのうち約17%の約340万Lに添加しました。これにより約700t-CO2の削減効果が得られました。

  • 施工総合研究所にて、K-S1によるパワーショベルでの燃費改善効果を確認済み
K-S1
K-S1
K-S1添加状況例

環境配慮型燃料(GTL)の利用

2020年3月当社の旧本社ビル解体工事より、環境負荷の少ない天然ガス由来のGTL燃料(軽油代替燃料)の利用を始めました。
この燃料は軽油と比較してCO2排出量を約8.5%削減することができることや、煤が少なく無毒性で、貯蔵の安定性にも優れているなど、さまざまな利点を有する次世代の環境配慮型燃料であり、オフロード車両において使用することができます。前述の本社ビルの工事を皮切りに、配送可能範囲(関東・中部・関西)に適した範囲の作業所に活用を推奨しています。
2022年度はGTL燃料を約98万L利用し、約210t-CO2の削減効果が得られました。

GTL燃料で稼働する重機
GTL燃料稼働を示すステッカー

バイオディーゼル燃料の活用

CO2排出量をカウントしないカーボンニュートラル燃料として、植物性の食用油を精製した再生燃料であるバイオディーゼル燃料の現場での利用拡大を図っています。バイオディーゼル燃料の品質のばらつきを考慮し、蒸留した高純度バイオディーゼル燃料を利用し、機械を限定して活用しています。現状では、バイオディーゼル燃料を利用できる建機に制限が多いため、リース会社と協調して、当社用にバイオディーゼル燃料専用発電機を用意し、建築作業所における鉄骨やスタッド溶接等に利用しています。また、欧州では一般的であるバイオディーゼル燃料を軽油に20%混合したB20燃料を考慮して、30%混合したB30燃料の実証実験を熊本県の作業所で行い、問題無いことを確認し、今後のB30燃料の活用を推進していきます。
2022年度はバイオディーゼル燃料を約7.8万L利用し、約200t-CO2の削減効果が得られました。

バイオディーゼル燃料専用発電機
バイオディーゼル燃料で稼働する重ダンプ
B30燃料実証実験用発電機

行動計画②:再エネ電力の調達・使用の推進(スコープ2)

建設工事で発生するCO2の内、約30%は電気の使用によるものです。建設工事においては、これまで仮設照明におけるLED採用等、電力の省エネに寄与する取り組みを推進してきました。さらに当社では、2019年にRE100イニシアチブに加盟し、建設工事を含む事業活動での再エネ電力利用を推進しています(当社の再エネ利用率の実績はこちら)。
カーボンニュートラルの実現に向けては、建設機械を含む様々な機器が電化することで、当社の電力使用量は増加する可能性があります。当社ではこれまで以上の省エネに取り組むと共に、追加性のある再エネ調達の拡大により、カーボンニュートラルな事業活動を目指します。

再生可能エネルギー電力の調達スキーム

当社では再エネ由来の電力であることが認証※4された電力の調達を進めています。今後はコーポレートPPA等のスキームも活用し、より追加性のある再エネ電力の調達に取り組みます。

  • ※4電力系統から受電する電力は、「再エネ証書」(非化石証書、J-クレジット、グリーン電力証書等)付きの電力を購入・使用することで、再エネ電力であることが認められる。

再生可能エネルギー電力の自家消費

当社保有の施設では、太陽光パネルによる再エネ電力の自家消費にも取り組んでいます。建設現場は敷地条件や工事期間による制約から、太陽光発電の自家消費によるメリットを最大限に生かすことが難しいという特徴がありますが、条件の良い作業所では積極的に太陽光パネルによる再エネの自家消費にも取り組んでいます。

筑波技術研究所 構造施工実験棟
成田工場(プレキャスト部材)
作業所における安全通路の屋根を利用した太陽光パネル設置例

再生可能エネルギー事業の更なる展開

当社は国内5カ所の太陽光発電所(計37.2MW)、ブラジルで1カ所の陸上風力発電所(27.72MW)で発電事業を行っています。また、当社の土木事業においては太陽光発電所646MW、陸上風力発電所351.6MWの建設に携わってきました(2022年3月時点)。今後も再エネ発電所の発電事業及び建設に積極的に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

なお、当社の浮体式洋上風力発電事業への取り組みは以下リンクよりご参照ください。

TODAメガソーラー深谷発電所
(15.6MW,埼玉県)
ブラジル陸上風力発電所
(27.72MW,リオ・グランデ・ド・ノルテ州)

行動計画③:低炭素資材の調達推進(スコープ3 カテゴリ1)

建設業では、コンクリート、鋼材、セメント等の躯体材料を初め、内外装には多種多様な建材を大量に調達します。これらの資材は、原料調達から製造までの段階で大量のCO2が排出されており、当社ではこれらのCO2排出の少ない資材の調達や研究開発に取り組んでいきます。

低炭素資材の特定と調達の推進

当社では、これまでグリーン購入法に基づく特定調達品目の調達に取り組んできました(グリーン調達)。さらに今後は、資材の「原材料調達から製造段階」に至るカーボンフットプリントの小さい資材を特定し、定量的なCO2削減効果を活用した低炭素資材の調達を推進し、スコープ3カテゴリ1の削減に取り組んでいきます。

CO2排出の少ない建設材料の開発

環境配慮型のコンクリート「スラグリート®」による建築物の低炭素化

当社と西松建設(株)で共同開発した「スラグリート®」は、製鉄所の高炉から発生する副産物である高炉スラグの微粉末を、セメントの代替として用いることで、セメント製造における温室効果ガスの排出量を削減したコンクリートです。脱炭素社会の実現に貢献するほか、副産物を有効利用することでセメント原料となる石灰石資源の投入量削減にもつながり、循環型社会の実現にも寄与します。

スラグリート®70の例

建設材料技術性能証明書
建設材料技術性能証明書
「スラグリート®」の混和材使用率
スラグリート®70の混和材使用率
壁状部材の温度解析結果(例)
壁状部材の温度解析結果(例)
コンクリート製造時におけるCO2排出量の削減効果
コンクリート製造時におけるCO2排出量の削減効果

なお、これまで「スラグリート®70」を主に地下構造物に適用してきましたが、上部構造物にも適用可能な高炉セメントA種相当コンクリート「スラグリート®BA」、コンクリート製造時の高炉スラグ微粉末の使用量を抑えた高炉セメントC種相当コンクリート「スラグリート®BC」を開発しました。

スラグリート®BA(コンクリート製造時におけるCO2排出量の削減効果:21%)

 普通ポルトランドセメント50%、高炉セメントB種50%の混合比率にて製造した高炉セメントA種相当のコンクリート

スラグリート®BC (コンクリート製造時におけるCO2排出量の削減効果:62%)

 高炉セメントB種60%、高炉スラグ微粉末40%の混合比率にて製造した高炉セメントC種相当のコンクリート

スラグリート®のラインナップを充実させることで、構造物全体に環境配慮型のコンクリートを適用することが可能となります。当社では脱炭素社会・循環型社会の実現を目指し、建築・土木の両分野において本技術を積極的に普及・展開していきます。

スラグリート®70がエコリーフを取得

スラグリート®70(呼び強度40※1)について、(一社)サステナブル経営推進機構(SuMPO)が認証するSuMPO環境ラベルプログラムである「エコリーフ」※2を取得しました。
当プログラムにおいて、生コンクリートによる取得は国内初となります。

エコリーフ宣言

登録番号 公開日 宣言PDFリンク
JR-BY-23001E 2023年4月10日
エコリーフ
(912KB)

1:JIS A 5308に規定するコンクリートの強度の区分。

2:エコリーフ認証はSuMPOが運営するプログラムにおいて、製品のライフサイクルにおける定量的環境情報をLCA(ライフサイクルアセスメント)手法を用いて見える化するものです。その情報に基づき、提供者と利用者間での環境負荷情報についての相互理解、コミュニケーションを促進することが目的です。第三者による審査・検証を経て、信頼性・透明性の担保されたデータが開示されることにより、利用者は製品の環境負荷を定量的・客観的に評価することが可能となります。また、エコリーフ認証建材の採用は建築物のLEED認証※3における加点対象となることから、不動産価値を高める付加価値も生みます。
https://ecoleaf-label.jp/

3:LEED認証はLeadership in Energy & Environmental Designの略。建築物の環境性能を第三者が認証する任意の制度で、米国グリーンビルディング協会(U.S.Green Building Council)が運営。

エコリーフ認証

行動計画④:ZEB・省エネ建物の拡大(スコープ3 カテゴリ11)

建物のライフサイクルにおいて、建物使用段階は最も多くのエネルギーを使用しています。当社のサプライチェーン排出量においても、「施工した建物の運用期間中のエネルギー消費(スコープ3カテゴリ11)」が最も大きな割合を占めています。
このエネルギー消費を削減する手段がZEBです。当社では、快適な室内環境を実現しながら、建物の省エネルギー化、再生可能エネルギー利用を推進する技術開発等に取り組んでいます。

ZEBの普及に向けた取り組み

わが国では、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」として、2030年には新築される建築物においてZEB基準の水準の省エネ性能が確保される、2050年にはストック平均でZEB基準の水準の省エネ性能が確保されることを目指しています。これを受け、当社では2030年に当社の設計案件がZEBを達成するよう省エネ設計の強化に取り組んでいます。

ZEB・省エネ建物の拡大に向けた詳細はZEB参照。

カーボンマイナスに向けた研究開発の強化

当社は、筑波技術研究所(茨城県つくば市)にて、ZEBの実現に向けて2017年に建設され、所期の実証作業を終えた環境技術実証棟を、省エネルギーに加えてカーボンマイナス※5に向けた新たな取り組みをスタートさせるために、グリーンオフィス棟へとリニューアルしました。
グリーンオフィス棟は、建物四周を壁面緑化ユニットで覆い、室内はバイオフィリックデザインを取り入れて、新しい働き方への対応を考慮した室内環境を構築しています。また太陽光発電や地中熱利用、AI制御によるタスクアンビエント空調などを取り入れて省エネルギー化を図っています。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において「ZEB」を取得し、一部は環境省補助事業として実施しており、現在はCASBEE、WELL認証の取得を進めています。今後はグリーンオフィス棟を所員の執務スペースとして使いながら、カーボンマイナスの実現に向けたさまざまな技術の実証を行う計画です。

  • ※5カーボンマイナス:施設のライフサイクルにおいて、施工時や廃棄時に加え、エネルギー消費などの運用にともなうCO2排出量(プラス要因)に比べて、再生可能エネルギーの利用と木材・樹木によるCO2の固定・吸収による削減効果(マイナス要因)が大きく、収支としてマイナスとする考え方。
グリーンオフィス棟概要
グリーンオフィス棟
構造
鉄筋コンクリート造(免震構造)
階数
地上2階
建築面積
379.61m2
延床面積
674.38m2
  • SCIENCE BASED TARGETS DRIVING AMBITIOUS CORPORATE CLIMATE ACTION
  • RE100
  • ECO FIRST
  • BOSS IKUBOSS AWARD 2016